NDフィルターを用いたクリエイティブフォトのつくり方 vol.2
文・写真:山本高裕

NDフィルターの基本をご紹介する第2回目は、フィルターの選び方です。このシチュエーションで/こんな効果がほしいときには/このフィルターを選ぶべし/という3ステップを、思わず見入ってしまう見事な作例とともにご紹介します。

ND 1000 、20 mm、ISO 64、f/11、SS 45秒(撮影場所:静岡県沼津市)

ISO(感度)とフィルターの関係

みなさんが使っているカメラでは、ベースとなるISO(感度)はさまざまだと思います。よくあるのはISO 100、そしてISO 200などでしょうか。

前回ご説明しましたが、ISO の数字が2倍になれば感度は「1段」上がります。露光時間で考えると、感度が1段上がると露光は半分で済みます。露光が半分になるということはそれだけ手ブレしづらい、夜景の撮影にかかる時間が半分になるなど、いいことも多いです。しかし、「長秒撮影」という観点では、同じNDフィルターを使ってもベースのISOが1段高いと効果は単純に半減する、ということなってしまいます。

したがって私にとっては、ベースのISOが64というニコンのD850(D810も)がベストチョイスということになります。

「でも、ちょっと待って。私のカメラのベースISOは100だけど、拡張するとISO50まで感度が下げられます!」

そうなんです。その通りなのですが、拡張ISOはあくまで非常用です。特に明暗差の激しい場所などでは明部が白飛びしやすくなるなど、風景写真にとってあまり良いことはありません。できることなら、なるべく使いたくないものです。

「では、その分絞ればいいんじゃない? 今使っているカメラのベースISOは200だけど、ISO 100でf/11なら、もう一段絞ってf/16なら同じ露光時間を稼げるよ! 」

確かにその通りです。でも、絞り過ぎると「回析現象」という光が回り込む現象が発生し、ピントがジャストでもなんとなくぼんやりとした、解像度が甘い絵になってしまいます。もちろん、手前から奥まで奥行きのある風景をワンショットで収めたいときなどに絞り込むことはあります。でも、せっかくなら、使っているレンズがもっとも解像する「おいしいf値」を使いたいものです。

ND 1000、24 mm、ISO 31、f/20、SS 60秒(撮影場所:東京都港区)

このときはND 1000を1枚しか持っていかなかったため、やむを得ずISO 31の拡張感度を使用し、さらに f 値を20まで絞った。現像でハイライトの階調をどうすることもできず、また絞りすぎたために(画面からはわからないが)細部がゆるい絵になってしまった。

「じゃあ、適正なISOと絞り値で長秒露光をするにはどうしたら?」

その解決策として、状況に応じてNDフィルターを使い分ける、または複数を組み合わせるということが考えられます。

私が使っているのは角型150mmシステムで、ND 8とND 64、ND 1000の3枚を使い分ける、または組み合わせてさまざまな光の環境に対応するようにしています。

需要が高い角型100mmシステムをお使いであれば、150mmシステムよりも種類豊富にフィルターが用意されているので、非常に緻密(ちみつ)な対応ができるでしょう。

100mmシステムのNDフィルター

150mmシステムのNDフィルター

シチュエーション別フィルターの選び方

私がNDフィルターを使用する場合、日の出前から撮り始めて日の出後まで、または日の入り前から撮り始めて日の入り後まで、ということがほとんどです。光の移り変わりを見ながら、テストショットも含めて時間帯によってNDフィルターを使い分けて対応しています。

 先にも書いた通り、私が主に使っているのは、ND 8、64、1000の3枚と、フィルターの上半分だけを減光するハーフND。そして、水面の反射を抑えるPLフィルターの5枚です。

完全に暗闇の時間帯:なにか特殊な意図がないかぎりNDフィルターは使いません。
薄明かりが差してくる時間帯:ND 8単独で減光して露光時間を稼ぎます。
日の出前(日の入り後):ND 64 単独で減光します。
日の出前後:ND 1000 単独で減光します。
それよりさらに前後の明るい時間帯:ND 1000+ND 8の組み合わせで、主にISOを変えることで露光時間を調整します。

では、実例をご紹介しましょう。

(1)雲の動きを残す30秒露光

この日は雲の動きが速かったため、露光時間を30秒と短めにして雲がダイナミックに動く様子を写しました。最初、もっと長い露光時間を考えていたため、NDフィルターを2枚重ねて撮影をスタート。途中で露光時間を変えたために、NDフィルターを外す時間がなく、ISOを上げることで対応しました。

ND 1000ND 8、ISO 320、14 mm、f/8、SS 30秒(撮影場所:千葉県南房総市)

(2)日没後の薄明かりで長秒露光

日没後20~30分くらいの時間帯で、暗いとはいえまだ十分に明かりが残る時間帯でした。水面をなだらかにするために30秒露光を選択。そのため、ここではND 64を使って調光しました。世界がオレンジ色に包まれる、個人的には一番幸せな時間帯です。

ND 64、ISO 100、14 mm、f/9、SS 30秒(撮影場所:千葉県館山市)

(3)夜明け前の薄明かりで長秒露光

上の写真とは逆の夜明け前の光です。日の出にはまだ40分近くあったため、かなり薄暗く、ND 8を使用して60秒間露光しました。夜明け前から霧が立ち込めてきて、思っていたのとは全く別の幻想的な夜明けとなりました。

ND 8、ISO 100、14 mm、f7.1、SS 60秒(撮影場所:茨城県鹿嶋市)

(4)「超」長秒露光で動きの遅い雲を動かす

実験的な写真です。こらえ性がない私は、2分以上の露光をめったにやることがないのですが、日没まで暇だったので撮ってみた写真です。このときは雲の動きがほとんどなかったので、ND 1000にND 64を重ねて、12分間露光しています。

ND 1000ND 64、ISO 64、14 mm、f/11、SS 260秒(撮影場所:静岡県沼津市)

(5)夜明けに走る車の光跡を写す

まだ車がライトをつけて走っている、夜明けの時間帯です。フィルターを使わずに露光すると1秒に満たない程度だったので、ND 8を使用して6秒の露光時間を確保しています。左側の高架にモノレールが走ってくるタイミングを見て約20枚を連写、ポストプロセスの段階でそれらを重ねて1枚の写真に仕上げています。

ND 8、ISO 64、38 mm、f/9、SS 6秒(撮影場所:神奈川県川崎市)

(6)夜中にNDフィルターを使う

真っ暗な場所でNDフィルターを使う必要はほとんどないのですが、この夜は天気も今ひとつ。雲もほとんど流れていなかったため、ND 8を使って露光時間を延ばしました。東京の空は明るい! ノーフィルターで30秒ちょっとのシャッタースピードだったため、フィルターを装着することで露光時間は300秒になりました。三脚を立てたのは荒川沿いの土手で、自転車に乗った釣り人が前からやってくる一部始終(ライトだけですが)が意図せず写り込み、それが面白いアクセントになりました。

ND 8、ISO 100、14 mm、f/11、SS 300秒(撮影場所:東京都葛飾区)

まとめ

自然の光量は時間帯によって異なりますが、天気によっても異なります。経験を積めば感覚でNDフィルターを使い分けられるようになりますが、それまではNiSiのアプリなどで計算しながら、経験を積む(もちろん、楽しみながら!)のがよいと思います。

山本高裕 Takahiro Yamamoto

東京生まれ。出版社の編集者と写真の仕事を並行してこなしている。2018年、電子写真雑誌「Tokyo Photography Magazine」を自主発行。写真愛好家グループ「東京夜間写真部」主宰。Tokyo Photo Inspilations Facebook Google Plus
詳しいプロフィール