クローズアップレンズで広がる写真表現 vol.1
文・写真:長瀬 正太

本サイトでは、風景写真および独特の花火撮影でおなじみの写真家、長瀬正太さん。もう一つ(3つ目?)の顔として、マクロ写真の名手としても知られています。一見異なるジャンルを横断しているようでもありますが、マクロの世界においても長瀬ワールドは健在、写真へ向かうスタイルは共通するものがあります。そんな長瀬さんが「クローズアップレンズ」でおすすめする、マクロ撮影入門編です。

NIKON D800E, f/5.6, 1/160秒,ISO400,-1補正 116mm / クローズアップレンズ NC キット

NiSi クローズアップレンズNCキットとは

「クローズアップレンズ NC キット」は、望遠レンズに取り付けることで最短撮影距離を短くし、マクロ撮影を可能にします。焦点距離70mm 〜 300mm(フルサイズ換算時)のズームレンズ/単焦点レンズで、ワーキングディスタンス(※)22cm〜30cmでの撮影が可能となります。

※ワーキングディスタンス:レンズがピントを合わせられる、レンズ先端部から被写体までの最短距離のこと。
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ということで、今回私は自身の手持ちズームレンズである”AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR”に着けて使用してみました。
上記の解説の通り、レンズのピント位置を最短撮影距離付近に合わせると22~30cmという距離感で被写体にピントが合います。
70-200mmの実際の最短撮影距離が1.4mなので…これは非常に近い。この時点で私はもうどんな写真が撮れるのかドキドキし始めてしまいました(笑)。

基本編:マクロレンズ的使用法

クローズアップレンズを付けていない状態での70mm側の写真

さて、私はマクロ撮影の際に三脚は使わずに手持ち撮影をするのですが、この日もカメラとクローズアップレンズだけを持ちぶらぶらとお散歩。そして近所で見つけた南天をパシャリ。
南天は葉のフォルムが美しく紅葉の色変化と連続性に飛んでいるので好きな被写体の一つなのですが、クローズアップレンズなしで撮ると本当に「南天を撮りました。」という状況写真にしかなりませんね。

NIKON D800E, f/5.6, 1/250秒,ISO400,-1補正 70mm / クローズアップレンズ NC キット

そしてこちらが、焦点距離は70mmのままにズームレンズの先端にクローズアップレンズを付けて撮影した1枚です。
どうでしょうか?
まだズームレンズの広角端であるにも関わらずにこのボケ感。ピント面のシャープさと相まってこの時期に絶妙に変化していく葉の色が柔らかなグラデーションで優しく伝わってきます。

NIKON D800E, f/5.6, 1/160秒,ISO400,-1補正 116mm / クローズアップレンズ NC キット

次の1枚は、もう少し構図を狭くしたかったので焦点距離を70mm→116mmへ。焦点距離が長くなることでグッとボケ感も増して、よりマクロ的で柔らかな描写になりましたね。

改めて3枚を並べてみます。その違いがよくわかります。

70mm (クローズアップレンズ NC キット・無し)

70mm + クローズアップレンズ NC キット

116mm + クローズアップレンズ NC キット

  • 70mm(広角)側にすることで主要被写体を小さく、空間を広く出来ます
  • 200mm(望遠)側にすることで主要被写体を大きく、空間を狭く出来ます

マクロレンズとの違いは、撮影する距離感

ただし、ここで一つ注意したい点があります。
それは被写体との距離感です。
通常の単焦点マクロレンズの場合、構図の中の被写体の大きさを変えたい時には自分が動いてレンズと被写体との距離を変えてコントロールします。ですが、このクローズアップレンズを付けた場合、ピントの合う範囲が22~30cmに固定されているので被写体の大きさを変えたい時にはズームリングでズームさせることでコントロールします。
慣れないうちはこの被写体との距離の取り方の違いに少し戸惑ってしまうかもしれませんが、この点に気をつけるようにすればクローズアップレンズでの撮影がぐっと楽になると思います。

手持ち撮影のすすめ

さらにここでワンポイントアドバイス。
一般的に「マクロは精密にピント位置を合わせる為に三脚使用を推奨」と聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、私の経験上ではマクロは三脚を使用しない方が簡単です。
特に屋外では被写体は常に揺れて動き続けていますから、三脚で固定をした上で目的の位置にピントを合わせるというのは非常に困難。
さらにとても狭い世界観で切り取るマクロでの構図作りを三脚で固定した上で試行錯誤していたのではいつまで経っても自分のベストな構図は見つけられません。
ですから、クローズアップレンズ撮影の際にも三脚から解放されて気軽に撮影に挑戦して頂ければと思います。
※手持ち撮影時は手ブレにだけはお気をつけ下さい。概ね「1/レンズの焦点距離(秒)」よりも速いシャッタースピードを確保するとブレにくいと思います。

望遠ズームによるボケ量の最大化

NIKON D800E, f/5.6, 1/400秒,ISO400,-1補正 200mm / クローズアップレンズ NC キット

3枚目は焦点距離を116mm→200mmへ。最大望遠となり横構図では綺麗な葉のフォルムが画面に収まらなかったので縦構図へと変更。
さぁどうでしょうか、このボケ感。
より滑らかなボケによって被写体も背景も溶け出しているかのような雰囲気となり、冬の日のすこしもの寂しい空気感までもが伝わってくる気がします。これをマクロ機能の付いていない望遠ズームレンズで撮影しているとは、ちょっと信じ難い程ではないでしょうか。
ちょっとした散歩のつもりで出掛けた私も予想以上のクローズアップレンズのボケ感に楽しくなってしまい、つい時間を忘れて夢中になってしまいました。

クローズアップレンズのおすすめポイント

さて、ここからはより具体的に私がこのクローズアップレンズをおすすめするポイントを解説いたします。

ポイント①  高い解像感

まず一つ目のポイントはやはりその解像感の高さです。
こちらはドウダンツツジの葉の表面の微細な毛を等倍(100%表示)した写真です。

従来のクローズアップレンズの場合、解像感の低下や色ズレ(色収差やフリンジと呼ばれる光の波長のズレによる色にじみ)が強くて使い難いと言われておりました。ですが、このクローズアップレンズは「特殊低分散ガラスを使用したAPO(アポクロマート)設計を採用」しているので、絞り開放値から概ね2段ほど(今回の私の使用レンズで言いますと f/2.8→f/4→f/5.6)絞って使用しますと、ピント位置はシャープにくっきりと描写でき色ズレもほとんど出てきません。
また、マクロレンズでも色ズレは起こりますが、今回のAF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR+クローズアップレンズの組み合わせの方が色ズレは少ないと感じました。
それほどまでに色収差を一切補正しないでこの描写というのは驚きでした。
マクロレンズを使ったことのない方にも使ったことのある方にもぜひ体験してみて欲しい解像感です。

ポイント②  持ち運びがかんたん

次に非常に大きなメリットの一つが携行性の高さです。
このクローズアップレンズはマクロレンズに比べれば重量も軽く場所も取りません。さらにセミハードタイプのポーチもセットに付いてくるのでサッとどこにでも入れておけます。
通常、私は60mm等倍マクロ、90mm等倍マクロ、180mm等倍マクロなどを使用しますがさすがに普段から全てを持って歩くのは大変です。全部を持ち出すのは「今日はマクロの日!」と決めてフラワーパークや公園に出掛ける時くらいのものです。
そういった意味でも、冒頭に申し上げたように荷物の多い風景撮影時にはこのクローズアップレンズをバッグに入れておき、霧が出ないなぁ…今日は富士山見えないなぁ…といった時には「あ、そういえばアレがあったんだった」と頭の中を風景からマクロへ切り替え、朝露に濡れた足元のお花を探して歩こうかなと思っています。

※カメラバッグの中は通常、レンズ5本とテレコンバーターやフィルター・予備バッテリー類などでいっぱいいっぱい。

ポイント③  価格が安い

3つ目は現金なお話ではありますが「安価」ということでしょうか。
現行販売されている等倍マクロレンズと比べても非常に安価であり、しかも、現在100mmを超える望遠系マクロレンズは種類やメーカーが限られる上にコストもかなりお高いのです。
ですので「現在マクロレンズを所持していない、が、マクロ撮影にも興味がある。」といった方のマクロ入門にはうってつけではないでしょうか。

NIKON D800E, f/2.8, 1/640秒,ISO100,+0.3補正 200mm / クローズアップレンズ NC キット

クローズアップレンズ作例集

NIKON D800E, f/5.6, 1/200秒,ISO100,+0.33補正 200mm / クローズアップレンズ NC キット

NIKON D800E, f/5.6, 1/100秒,ISO400,±0補正 100mm / クローズアップレンズ NC キット

NIKON D800E, f/5.6, 1/200秒,ISO400,-1補正 78mm / クローズアップレンズ NC キット

まとめ

さて、いかがでしたでしょうか?
普段から使用している望遠ズームレンズにくるくるっとこのフィルターを付けるだけでマクロの世界が楽しめるなんて本当に素敵なことではないでしょうか。
ここまで実際の使用感として様々なメリットをお伝えして来ましたが、最も大きなメリットはこの「手軽さ」にあるのかもしれません。もし今回の記事を読んで少しでも「おぉ、なんか楽しそうだな。」と感じて頂けたなら、ぜひクローズアップレンズの世界へ飛び込んでみて下さい。
それでは、また。

クローズアップレンズ NC キット

APO(アポクロマート)設計を採用。色のにじみを抑え、シャープで解像感の高いマクロ撮影を実現

望遠レンズに取り付けることで最短撮影距離を短くし、マクロ撮影を可能にします。焦点距離70mm 〜 300mm(フルサイズ換算時)のズームレンズ/単焦点レンズで、ワーキングディスタンス(※)22cm〜30cmでの撮影が可能となります。

※ワーキングディスタンス:レンズがピントを合わせられる、レンズ先端部から被写体までの最短距離のこと。

長瀬 正太 Shota Nagase

1975年生まれ 群馬県前橋市在住
デジカメ教室 主宰
日本写真協会 会員
フォトグラファーWEBマガジンXICO クリエイター
NiSi Filters オフィシャルアドバイザー

個展
2014年 HKU SPACE(香港)
2014年 Ⅶ International Tashkent Photobiennale(Uzbakistan)
2014年 長瀬正太 和紙写真展 ’心’(東京新宿)(RICOH IMAGING SQUARE SHINJUKU)
2018年 長瀬正太 和紙写真展 ’心’(前橋市)阿久津画廊

合同展
2013~2016・2019年 CP+(パシフィコ横浜) 阿波和紙ブース
2014・2016年 Photokina World of imaging(GERMANY)阿波和紙ブース
2014年 Creative Japanese Artist in Milan 2014(ITALY)
2014年 Onward-Navigating the Japanese Future 2014(Los Angeles)
2019年  International photo competition ART OLYMPIA (東京都美術館)
2019年  1st Armenian International Photo Festival(Armenia)

パブリックコレクション
2018年 平山郁夫美術館Caravanserai(UZBEKISTAN) 収蔵
2019年 在アルメニア日本国大使館(Armenia)収蔵

実績
2019年 CP+(パシフィコ横浜)NiSiブース登壇
2019年 International photo competition ART OLYMPIA(日本) ​佳作​
2019年 1st Armenian International Photo Festival(Armenia) 名誉審査員
2019年 1st Armenian International Photo Festival(Armenia)Master Class セミナー講師

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