可変NDフィルターで広がる写真表現 vol.5
文・写真:長瀬 正太

連載5回目の今回は、可変NDと他のフィルターと組み合わせた使い方のご提案です。ND1000、ND8に可変NDフィルターを重ねて2分近い長秒露光で撮影。そこには、角型フィルターともまた違う、新しい写真の世界がありました。

惺(せい) NIKON D800E, f/8, 120秒,ISO100 34mm / Pro Nano ND-VARIO エンハンスド可変NDフィルター +NiSi ND1000 +NiSi ND8 (現地時間am8:30ごろ撮影) ※タングステン&銀残し という独自手法にてレタッチ。

可変NDフィルターで広がる写真表現 INDEX

水と雲の描写

今回の表紙写真は茨城県大洗町にあります「大洗磯前神社 神磯の鳥居」の前にて撮影を行いました。思い切って太陽を構図の中に入れて120秒という超長秒露光を行っています。

太陽の強い光が鳥居を象徴的に浮かび上がらせ、120秒という露光時間によって海の波が消え空の雲が流れ…とても神秘的な1枚に仕上げることができました。

コツとしましては、1つの構図に「静と動」の被写体を同時に入れることと、超長秒露光の場合は水と雲、動きの遅い雲と動きの速い雲、などのようにいくつかの動きの違いがある被写体が同時に入ると面白い1枚に仕上がります。

高濃度NDフィルター

今回の肝は可変NDと組み合わせるND1000。この10段分もの光を抑制してくれるサングラスみたいなフィルターのお陰で、フィルター無し撮影ではどうしても速いシャッタースピードになってしまう日中長秒露光を可能にしてくれます。

1段というのがシャッタースピードを倍の長さにする効果なので、例えばフィルター無しで「1/250秒」というシャッタースピードであれば

1/250秒 →1/125秒 →1/60秒 →1/30秒 →1/16秒 →1/8秒 →1/4秒 →1/2秒 →1秒 →2秒 →4秒

となり10段減光で「4秒」にしてくれます。さらに足りない分を可変NDフィルターやND8フィルターを付ける、もしくは絞り値を上げる、ISO感度を下げる、などの調節で

4秒 → 8秒 → 15秒 → 30秒 → 60秒 → 120秒

とさらに5段分、シャッタースピードを遅くすることで120秒にできます。

※減光の段計算にはいくつかやり方があります。筆者は段変化を元に計算しています。
※長秒露光撮影時はカメラはマニュアルモード&バルブモードでの撮影になります。

遠志(えんし) NIKON D800E, f/8, 120秒,ISO100 112mm / Pro Nano ND-VARIO エンハンスド可変NDフィルター +NiSi ND1000 +NiSi ND8 (現地時間am6:30ごろ撮影)

明るい時間帯でも超長秒露光のできる楽しさ

このように可変NDフィルター高濃度NDフィルターなどを併用することでかなり明るい状況でも1分を超える露光時間にすることができます。これは早朝のドラマティックな日差しを目いっぱい楽しんだ後の時間帯にも気軽に長秒露光ができることを意味します。

また、初めて行く場所であったりツアーなどでどうしてもお日様が昇ってしまった時間しか撮影できない時など、日中しか時間が取れない場合にも非常に有効な撮影法になります。

私などは早朝の撮影後に車の中で暖房にあたって居眠りしてしまい「気がついた時にはお天道様が真上にあった(愕然)。」というような状況でも…諦めないでNDフィルターを重ねて作品撮りを行う。なんてこともあります(笑)。

-NiSi可変ND 豆TIPS-

ここで、以前に読者からいただいたご質問を1つ。「なぜ長瀬先生は角型フィルターではなく円形フィルターを使うのですか? 」というものです。

これには理由が2つありまして、私が初めて使ったフィルターが円形だったので「長秒露光時には円形フィルター」と短絡的に思考がつながってしまうのです(笑)。

もう一つは、風景撮影において望遠ズームレンズを多用する点があります。つまり、角型フィルターでないとフィルタリングのできない広角レンズをほとんど使わないのです。これは私が表現したい世界観に通ずるので自然とそうなりました。

ただ、今回のような写真は角型フィルターでも撮影できますし、いずれ広角レンズ+フィルタリングで表現したい世界観に出会えたら角型フィルターも使ってみたいなと考えています。

可変NDフィルターの役目(可能性)

さて、本題に戻りまして…実は今回の超長秒露光写真の3枚、これだけ撮影の時間帯と日照条件がまったく違う中、絞り値(f/8)・シャッタースピード( 120秒 )・ISO 感度( ISO100 )を全く同じ設定にしてあることにはお気づきでしょうか?

これは自分で言うのもなんですが(誰も言ってくれないので自分で言っていくスタイル)この世界ではわりとすごいことだと思っています。

それを可能にしているのが NiSi可変NDフィルター(露出調整役)なのです。

さらには、NiSiのフィルターならこれだけ重ね付け(可変NDはそれだけで2枚のレンズなので今回の撮影ではフィルターを4枚重ね付けしています)をしても顕著な色被りやムラが少なく、写真としてほとんど影響がありません。このような道具に出会えたからこそ私は「円形フィルターの複数枚重ね付け」という常識を覆すような使い方でまったく新しい世界を見ることができたのです。

…ただやはり、撮影時はレンズの先がとんでもないことになっていて少し恥ずかしいのと、ちこっと非常識な使い方なので重ね付けによるレンズのケラレ(写真の四隅に影が入る)だけは注意して下さいね。

円形フィルター重ね付けの注意点

ということで円形フィルターを何枚も重ねて取り付けた場合の注意点は大きく2つ。

1つはフィルターに厚みがでることによるレンズのケラレです。レンズの焦点距離でいいますと…

  • 可変NDフィルターのみの場合 …焦点距離24mmまではケラれない
  • 可変NDフィルター+NDフィルター1枚 …焦点距離27mmまではケラれない
  • 可変NDフィルター+NDフィルター2枚 …焦点距離28mmまではケラれない

となりますので覚えておくと便利です。(全て35mm換算での焦点距離です。角型フィルターの場合は問題なし。)

もう一つは、フィルターを重ね付けに限らず1枚でも使用している際に注意して欲しい点ですが、一眼レフカメラの場合はファインダーから光が漏れ込んでくる場合があるのでファインダーカバーやアイピースシャッターなどを使用してファインダーを遮光しましょう。
さらに、レンズにピント位置の距離計などの小窓がついている場合もそこから光が漏れ込んでくる場合があります。(下段参考写真)
その場合はレンズの小窓をパーマセルテープのような弱粘着の黒テープで遮光をしてあげましょう。

※太陽の光がレンズの小窓から射し込んでしまっている状態。

まとめ

今回のまとめとなりますが…

「可変NDと高濃度NDを組み合わせれば日中にも超長秒露光を楽しめる! 」となります。

注意点としては、概ね30mm(35mm換算)よりも広角となる焦点距離付近からフィルターによるレンズのケラレが発生しやすくなります。広角レンズでの撮影時には角型フィルターをご使用下さい。

最後に…

私の地元グンマーには海がなく、最近ではこちらの記事を執筆するために茨城県は大洗海岸まで出向いています。今までに山中の湖や川・滝などで長秒露光を行うことが多かったのですが海は波の音も風も気持ちよく、いつにも増して清々しい気持ちで撮影させて頂いております。

ラストに掲載されているお写真はそんな早朝にたまたま見つけた「大洗海岸から見た鹿島臨海工業地帯」です。こんな風にしていままでに行ったことのない場所へ行き、撮ったことのない被写体を撮ることでまったく新しい発見があることも…私がいつまで経ってもカメラに夢中になってしまう要因の1つです。ぜひこの記事を読んでくださっている皆さんにもNiSiのフィルターをカメラバッグに潜り込ませ、今まで行ったことのない場所へ行き、目いっぱい楽しんでいただければと思います。ではまた。

息吹(いぶき) NIKON D800E, f/8, 120秒,ISO100 400mm(テレコンバーター使用) / Pro Nano ND-VARIO エンハンスド可変NDフィルター +NiSi ND1000 (現地時間am7:15ごろ撮影)

NDフィルター Pro Nano ND-VARIO エンハンスド可変NDフィルター 1.5-5段減光

1.5段〜5段の減光量を無段階に調節可能な可変NDフィルター
NiSi Pro Nano ND-VARIO エンハンスド可変NDフィルターは、1.5段〜5段の減光量を無段階に調節可能な可変NDフィルターです。ND量はフィルター外周のノブによって容易に調節可能。意図した被写界深度やフレームレートを保持したままで露出を制御することで、より厳密かつクリエイティブな写真/映像表現を可能にします。

長瀬 正太 Shota Nagase

1975年生まれ 群馬県前橋市在住
デジカメ教室『Message』&写団「蒼」主宰
「日本写真協会」会員
ヒーコ」記事執筆&セミナー講師
「デジタルカメラマガジン」「NikonD810ムック」他 記事寄稿
「尼康鏡界」(Nikon中国公式Webマガジン)記事寄稿

展示会など

2013~2016年 「CP+」 阿波和紙ブース
2014年「HKU SPACE」個展(香港)
2014年「Photokina World of imaging」(GERMANY)阿波和紙ブース
2014年「Creative Japanese Artist in Milan 2014」(ITALY)
2014年「Ⅶ International Tashkent Photobiennale」(UZBEKISTAN)
2014年「長瀬正太 和紙写真展 ’心’」(東京新宿)(RICOH IMAGING SQUARE SHINJUKU)
2014年「Onward-Navigating the Japanese Future 2014」(Los Angeles)
2016年「Photokina World of imaging」(GERMANY)阿波和紙ブース
2017 年「静寂 -短歌と写真が織り成す美しい世界- 」 (沼田市)生方記念文庫企画展
2017 年「ぐんまの景観がこんなにも素晴らしい5つの理由」(群馬県)群馬県立自然史博物館企画展

常設展示

  • ヨガスタジオ ポスチャー様(前橋・高崎)
  • 新前橋かしま眼科形成外科クリニック様
  • オキュロフェイシャルクリニック東京様
    (クリニック様は見学の場合は長瀬まで要連絡)

Webサイト