NDフィルターで撮る花火写真 vol.3
文・写真:山田春子

花火撮影のポイントのひとつは、明暗差をどう解消するか。そのために、第1回目では、ハーフNDフイルターの使い方を解説しました。今回は、その応用編、リバースNDフィルターも視野に入れつつ、フィルター2枚重ねの撮影法について解説します。

2018年8月15日 東京都 大田区平和都市宣言記念事業「花火の祭典」 ISO100, IR ND4+Hard nano GND(4)0.6

連載1回目で、リバースNDフィルターを使用してスターマインの花火の上下の明暗差を埋める解説をしました。
今回は、2枚のフィルターを使用した例をご紹介します。
上の写真では、全面にND4フィルターを使用し、更に画面の下3分の1(1番下の白と赤の噴出花火の所)にHard nano GND(4)0.6を使用しました。

このようなワイドスターマインの中では、1番下に「トラ」や「扇打ち」等と呼ばれる、噴水のように噴き出す花火の演出がよく見られます。打ち上げるタイミングがコンピュータで細かく正確に制御され、スピード感や迫力がありとても見応えのあるシーンです。

しかし、写真を撮影してみると、上に開く花火より下がかなり明るくて、露出オーバーになってしまう場合が多く、なんともカメラマン泣かせな花火でもあります。

ISO200, IR ND8使用

よくある失敗例を見てみましょう。
単色のNDフィルターを全面にかけて撮りました。

1番下の扇型の部分が露出オーバーで白くなってしまっています。普通に撮るとこんなに明るさが違うのです。この「一部分だけ明るい」花火を撮るためにハーフNDフィルターが有効で、前述の、リバースNDフィルターを使用する方法と、今回のようにフィルターを2枚使用する方法があります。(上の花火の明るさによっては、2枚ではなくハーフND1枚で良い場合もあります。)

リバースNDフィルターか、通常のハーフNDフィルターか?

リバースNDフィルターは1枚で2つの濃度が使えて便利で良いのですが、反面、グラデーションの幅が固定なので、撮りたい花火の構図と、グラデーションの幅が合わないと使いづらい場合があります。その点、通常のハーフNDフィルターで下から暗くする方法なら、暗くする幅を花火に合わせて自由に変えられるので、汎用性が高いと言えます。花火用に初めてハーフNDを使うなら、Hard nano GND(4)0.6又は(8)0.9をお勧めします。リバースNDフィルターはレンズの画角や、花火の特徴がおおよそわかっている場合に使うのが良いでしょう。初めて観る花火大会ではIR ND4などオーソドックスなNDフィルターでまず準備しておき、必要に応じてHard nano GND(4)0.6等を交換・追加して使いましょう。

また、NiSiのリバースNDフィルターは1番濃い部分がND8、薄い部分がND4です。

一方、ND4+ハーフND4の場合は、1番濃い部分が4×4でND16、薄い部分がND4になります。フィルター2枚重なっている所は暗すぎて、リバースフィルターの方が適している場合もあります。花火の明るさに合わせて選択しましょう。

ちなみに、筆者は円形の普通のNDフィルターも持っていますが、ハーフNDフィルターを使用する可能性がある場合は、はじめからアダプターを取り付け、NDフィルターも角形を使います。花火の最中に円形フィルターを外して角形をアダプターの取り付けからやるのは時間がかかるので、フィルターを入れ替えるだけで済む角形が素早く出来てお気に入りです。

鮮やかな扇の「色」を写そう

では、次の写真を見てみましょう。

2018年8月 神奈川県 プライベート花火 ISO 100, IR ND4 + Hard nano GND(4)0.6

こちらは小規模なスターマインですが、下の扇形の演出がとても豪華でエキサイティングな花火で、見応えのある写真に仕上がりました。ここまでこの記事を読んだ皆さんはもう予測がついているでしょう、そう、この写真も通常のND4フィルターに、更に下半分を暗くするハーフND4のフィルターを使用しました。そうしなければ、下の部分は色のない「白い扇」になっていたでしょう。しっかりハーフNDフィルターを使い、暗くしてあげることで鮮やかな噴出花火の色を表現することが出来ました。

打ち上げる花火屋さんの特徴を知ると作戦が立てやすい

この時打ち上げを行った煙火業者さんの花火は、過去に何度も撮影した事がありました。

とても明るい花火が多い花火屋さんで、特に下の「扇」は「めちゃ明るい!」というのが私の印象で、対策が必要だと予測し、ND4とハーフND4フィルターを準備しました。

ひとことに花火と言っても、打ち上げる煙火業者さんによって特徴が様々です。

きっちりとしたプログラムのある花火大会では、プログラム毎に担当の煙火業者名が記載してある場合も多いので、煙火業者さんを意識して撮影しているうちに特徴を掴むことができるでしょう。そして、お気に入りの花火屋さんを見つけるのも、花火鑑賞の楽しみのひとつですね。

まとめ

3回にわたって花火のフィルターワークを作例とともにご紹介してきました。

ここに紹介した「リバースNDフィルター使用」や、「フィルターを2枚使用」はどちらも、NDフィルターの応用テクニックの一例と言えます。応用に進む前に、まずは基本のNDフィルター(ISO100+ND4、又はISO200+ND8)で、どの花火がF値幾つで適正露出に写るか、という事を理解している事が大前提となります。花火の種類と特徴を知り、花火を見てしっかりF値が設定できてはじめて、適したフィルターワークの判断が出来ます。

また、どのような花火が行われているかわからない状態では、撮影の作戦も立てづらいので、まず1年目は下見のつもりで花火大会に足を運んでチャレンジしてみましょう。

そして撮った写真は、たとえ失敗しても消さずに残しておきましょう。次に撮影する時の貴重な資料になります。2回目、3回目に同じ花火大会に行く時には、前回撮った写真をよく見て復習していくと成功率が上がるでしょう。ぜひフィルターを活用してお気に入りの作品づくりに役立てていただきたいと思います。

山田春子 Haruko Yamada

大阪府出身。美しい風景とドライブが好きで、写真を撮りはじめる。だんだんと撮影の楽しさに魅了され、写真のプロの世界へ。「輝きの瞬間」をテーマに四季の風景写真と、大好きな花火を中心に撮影している。講師活動では年間約80回、延べ1,000人以上を指導。わかりやすいと定評がある。

資格・執筆など
一般社団法人 日本写真講師協会認定フォトインストラクター
クラブツーリズム写真撮影ツアー講師
2018年3月 カメラと映像のワールドプレミアムショー”CP+”の市川ソフトラボラトリー社のブースにて「感動の瞬間を色鮮やかに写す花火撮影とRAW現像」セミナーを開催
2018年6月 写真雑誌「フォトコンライフ2018年夏号」誌面にて、花火の特集記事「花火フォト簡単撮影テクニック」7ページを執筆