ドクター・リンの写真世界 vol.7

30秒の露光が水しぶきを霧化した状態に写し、幻想的な雰囲気をつくる

アービスコの国家公園(Abisko National Park)のアービスコ峡谷は、スウェーデン北部ラップランド地方に位置している。ノルウェーの境界と隣り合い、壮麗な峡谷のほか、オーロラ鑑賞の名所でもある。

滝、川、波を含め、水は最も一般的で、また人気のある長時間露光撮影の題材のひとつである。流水は、露出時間の変化に伴い表情が変わる。短時間露光だと、激しい流れと飛沫を写すことができ、躍動感が出る。逆に、長時間露光では流れが美しく滑らかになり、シルクのような質感が出て、幻想的な印象となる。水を撮る原理は簡単だが、効果的な作品を撮るには、細部に注意しなければならない。

この作品は黄昏時で、光はやわらかく、水流を撮るのに最適である。柔らかな光なので水面も露出オーバーにはならず、直射日光により周囲の岩の色やディテールを失ってしまうこともない。一般には、朝、夕方や曇りが水を撮る最も良い時間帯だ。

私はND64とPLフィルターを使い、シャッタースピードは30秒にした。この30秒の露光は水しぶきを霧化した状態に写し、幻想的な雰囲気をつくる。また、PLフィルターは湿っぽい岩の反射を除去し、色をより鮮やかにしコントラストを上げることができる。

構図は、対角線上にあるS字曲線の流れを主な要素としている。対角線の構図はよく用いられる構図で、写真に強い動感を与え、さらに奥行き効果を出す。また、S字形の曲線は、見る人に、柔らかで優雅な感じを与える。この作品の水流は対角線でしかもS字形の曲線であるため、動的であるも穏やかという視覚的インパクトを与えている。

一方で、この曲線は引き込み線となり、見る人の視線は左上から右下へ水流に従って流れていく。同時に、水と岩は動と静、冷色と暖色、硬さと柔らかさコントラストを形成している。川の上流や下流の形も、急速から緩やかに変化し、狭さと広さのコントラストにより開放感が強調される。また、水と岩の比率が構図において重要な要素となっている。静物があまりにも多くの空間を占めると、写真のダイナミズムが失われ、少なすぎても単調になる。これらの細部への配慮が、作品全体の美しさの決め手となっている。

Canon 5D Mark Ill, Canon EF 24-70mm f/2.8L @27mm, f/16, ISO:160, SS:30秒, V5ホルダー, ND64