金武武の花火月誌 12月

17歳で花火に魅せられ、30歳で花火写真家として独立。様々な花火を撮り続けてきた花火写真の第一人者、金武武さん。著書「超花火撮影術」に、こんなことばがあります。「花火は永久不変ではない。日々進化しているのだ。(略)その進化する花火を撮るためには撮影者も進化しなければならない」。そんな思いで花火と向き合う金武さんの、撮影生活の一端だけでも触れてみたい。そんな想いでお願いした、月1回の特別連載企画です。

ワイドスターマインの一場面。低空の噴出花火が露出オーバーにならない様にGND8ハードタイプを装着し撮影している

花火との出会いは17歳の時、横浜山下公園の花火がキッカケでした。
間近で見た打上花火の美しさに魅了され花火を追いかける人生が始まったのです。
大きくて迫力ある花火も好きですし小さな町の小さな花火大会で上げている花火もとても魅力的に感じます。
この連載では撮影テクニックだけでなく花火に関する様々なお話を書いていきたいと思います。

犀川の河川敷で開催される「晩秋の花火」

花火というと夏をイメージされる人が多いと思いますが日本では春夏秋冬花火は上がっています。
例えば秋にも素敵な花火大会があるのです。
「秋の花火は?」と聞かれると直ぐに思いつくのは「長野えびす講煙火大会」です。
長野えびす講煙火大会は毎年11月23日祝日に開催されています。
今年で113回目になりました。
長野駅から2kmほど南にある犀川の河川敷が花火大会の会場です。
この花火は「晩秋の花火」と謳っていますが夜は大変寒くなります。
関東に住んでいる私にとっては寒くて撮影どころではありません。防寒をシッカリして行かなければ花火を楽しむことができなくなります。
時には地面が凍っている事があります。そのくらい寒いのです。

花火は会場の右側で上げたり、左側で上がったり、また、右端から左端まで会場全体を使って打ち上げるミュージックワイドスターマインはお客様を感動の渦に巻き込みます。長野えびす講煙火大会の見どころの一つだと感じています。

肉眼では同じなのに、撮影すると露出オーバーになる「トラ」と「打ち星」

スターマインは上空で大きな玉を開花させ低空では「トラ」や「打ち星」と呼ばれる噴出型の花火を豪華に打ち上げます。肉眼では上空の花火とトラや打ち星は同じ明るさに見えていますが写真で撮るとトラや打ち星が明る過ぎて露出オーバーになります。煙火師さんにお話を聞くと上空の花火も低空のトラや打ち星も同じ火薬を使用していると言うのですがどうしてもトラや打ち星は明るくて露出オーバーになってしまいます。

Hard GND8(0.9)を装着

トラや打ち星が露出オーバーにならない様に撮るために私はGND8ハードタイプを使用します。トラや打ち星の部分だけNDフィルターを掛けるのです。これで上空の花火とトラや打ち星の明暗差を縮め露出オーバーにならない様に撮影を行っています。

華やかなスターマイン以外には一発ずつ丁寧に打ち上げる「全国十号玉新作花火コンテスト」も素晴らしいです。全国から厳選された煙火師が作った尺玉を単発で打ち上げてくれます。会場アナウンスで説明をしながら一発ずつ上げてくれるので「次はどんな花火が開くのだろう」と想像しながら楽しく撮影が出来ます。

花火は何処でも同じ物が上がっている訳ではありません。
各地の煙火店さんがその土地に合った花火をその土地にあった演出方法で打ち上げてくれています。
花火は一期一会なんです。

「全国十号玉新作花火コンテスト」ではアナウンスしながら一発づつ丁寧に打ち上げている

NiSi GNDフィルター

風景写真家のために特別に設計された、Nano IR コーティングが施された高品質な光学ガラス製のフィルターは、キズや汚れ・色かぶりのない優れた描写をもたらします。
構図に合わせてフィルターをかける位置を調整することができるため、表現の幅をより一層たかめてくれます。

金武 武 Takeshi Kanetake

写真の技術を独学で学び30歳で写真家として独立。打上げ花火を独自の手法で撮り続けている。写真展、イベント、雑誌、メディアでの発表に加え、近年では花火の解説や講演会の依頼、写真教室での指導も行う。1963年神奈川県横浜生まれ。

●著作等

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